九州DAN児

現役理学療法士が運営する ーがばいためになるブログー

腰痛 part2 寝起き後の腰痛について

 

 

 

朝起きた時に『腰が痛い 』と感じたことはありませんか?

寝起き後の腰痛は結構多いようで、だいたいの方が一度は経験しているようです。

今日はこのことについてお話していきたいと思います。

 

 

 

 

腰痛とは

一般に腰痛の定義で確立したものはありません。そのため主に疼痛部位、発症からの有症期間、原因などにより定義されます。部位に関しては、さまざまな見解がありますが、文字通りでいくと「腰部に存在する疼痛」という定義になります。具体的には、触知可能な最下端の肋骨と殿溝の間の領域とするのが一般的です。

 

詳しくは、前回のpart1をご覧ください

 

 

 

寝起き後腰痛の原因

 皆さんは、朝起きたときに、『腰が痛いな』と感じたことはありますか?リハビリに来院される患者さんの中にはこういった訴えは結構多い印象です。

・朝スッと起きれない

・布団の中で体操をして起きる

・目が覚めて時間をおいて起き上がる

・身体を反ったり曲げたりすると痛い

・寝返りすると痛い  

など

様々な朝の症状がみられます。

 

これらの多くは『寝返り不足』が原因とされています。

 

 

寝返り回数

 Q.一般的な寝返りの回数はどのくらいでしょう?

一般成人の寝返り回数の平均は『20回前後』といわれています。6時間睡眠を行うとして、だいたい1時間に3~4回の計算になります。

 

 Q.それでは、寝起き後腰痛ありの人は寝返り回数はどのくらいでしょう?

寝起き後腰痛のある方は、平均5回前後といわれています。圧倒的に少ないですよね。1時間に1回寝返りしているか否か程度です。

私の患者さんに話を聞いていると、『寝る時と起きた時同じあおむけでいるから、多分1回も寝返りしていない』と言われる方もいらっしゃいます。

 

それでは、なぜ寝返りをしないと腰が痛くなるのか考えていきましょう。

 

 

内臓の重さ

「天使の寝顔」の写真[モデル:伊藤里織]

 

寝返りをしないとなぜ痛くなるのでしょう。

あおむけで寝ているときを考えます。

私たちの身体の中には『内臓』があります。

その内臓の重さは、体重50kgの人で、『約20kg(筋肉や脂肪を含まず)』あります。めちゃくちゃ重いですよね。

あおむけの姿勢でばかり寝ていると、

・内臓が腰部の血管を圧迫

    ↓

・血管内の血流が滞る

    ↓

・血管内で運ばれている血中酸素が減少

    ↓

・筋肉に酸素が行き渡らず酸欠状態を引き起こす

    ↓

・白血球や発痛物質のブラジキニンなどが発生

    ↓

・血管が圧迫されているため、そこにこれらの物質が滞る

    ↓

・腰痛を引き起こす

 

こういった悪影響を引き起こすのです。

定期的に寝返りをすることができれば、発痛物質は血液とともに流れ、酸欠状態も改善され腰に痛みは生じなくなります

 

 

身体への負荷比率

頭:10%

胸:30%

腰:40%

足:20%  

このようになっており、胸や腰への負担が大きいため、寝返りが少ないと体重の70%を胸と腰、つまり背中だけで支えているのです。

 

 

交感神経優位の状態

背中が常に圧迫されていると、肩回りや背中の筋肉、腰やお尻の筋肉が血液不足や酸欠になり硬くなっていきます。いわゆる凝っている状態です。

凝っている筋肉がたくさんある場合、身体が興奮状態となり、交感神経優位になってしまいます。

交感神経優位になると下記の図のようになります。

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基本的に、昼間は交感神経優位で興奮している状態、夜間が副交感神経優位でリラックスしている状態となり、眠っているときは基本リラックスの副交感神経が働いています。

しかし、寝ている時に交感神経優位の興奮状態になると、寝ている身体はどうなるのでしょうか。上記症状になり、血管が収縮している為、筋肉に酸素が行き渡りません。筋肉が興奮状態になり、全身に常に力を入れているような状態になってしまいます。

すると、脳が興奮しているため、ノンレム睡眠(深い睡眠)に入ることができず、寝ていてもすぐに目が覚めたり、寝起きの爽快感が失われ、7~8時間寝たとしても寝不足の状態となってしまうのです。

 

 

 

快適な睡眠を行うには

寝返りは無意識での動きであるため、意識的に行うことはできませんが、環境を整えることで寝返り回数が変化することがあります。

しかし、根本的な改善にはなりません。なぜなら、

 

寝返り数減少→腰痛ではなく、腰痛→寝返り数減少が正しいのです。

 

これはよく間違われます。そのためまずは腰痛治療を第一に考えてください。

そのうえで、睡眠時の環境を整えていきましょう。

 

①理想の高さと硬さの枕やベッドを使用

 

まず大事なことは、枕やベッド選びです。

立っている姿勢に近い形で寝るのが一番身体に負担が少なく済みます。

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このように、胸と鼻を結んだときにベッドと並行になれば理想です。

 

枕が高すぎると、首や肩に負担がかかり、

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逆に低すぎると、顎が上がりこちらも負担増となります。

 

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また、ベッドが硬すぎると

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肩や腰に負担が集中します。

 

逆にやわすぎると

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腰が沈みすぎるため、腰が曲がった姿勢となり、逆に負担増になります。

 

ベッドや枕は価格が高い商品が良い物と思いがちですが、一概にはいえません。あくまで自分に合ったものを選びましょう。

 

②摩擦係数の小さい寝間着を着る

摩擦係数が小さい寝間着を着ることで、寝返り時のベッドや布団との摩擦を減らし、寝返りをしやすくします。

摩擦係数の小さい順として

シルク:0.250

麻(リネン):0.367

綿:0.380

スウェット:0.447

フリース:0.449

モコモコパジャマ:0.524

 

となっており、シルクや麻を着る事で寝返りしやすくなります。

若年者が、可愛いからといってモコモコパジャマを着ていると寝返りしにくいので腰痛の原因となりやすいのです。

 

 

③ベッドと壁の距離を離す

ほとんどの人はベッドを壁に付けて設置していると思います。

しかし、壁付けで寝ていると、壁があるという圧迫感や存在感が寝返りを邪魔します。そのため、壁側への寝返りが減少してしまいます。

なので、ベッドと壁は30㎝以上は空けましょう

 

 

④一人で寝る

腰が痛いのであれば一人で寝るのをオススメします。

さきほどの壁同様、隣に人がいると無意識にそちらへの寝返りを行わなくなります。

恋人や子供と寝ている人が多いと思いますが、身体のためには良くありません。

布団を並べて寝ている方は、敷き布団を一人一枚、ベッドの場合はシングルベッドを一人一つとし二人で寝る場合はシングルを二個くっつけたキングサイズに寝ましょう。

 

 

 

いかがだったでしょうか。

人間は基本的に人生の1/3を寝ています

今一度、睡眠の環境を整えてみましょう。