【痛み・疼痛】《慢性疼痛》 原因 メカニズム 治療
今日はとてもいい天気でした。
さて、私は病院で勤務している理学療法士です。
毎日毎日、患者さんのリハビリを行っています。
その大半が『痛み』に悩んでいて、痛みを取り除いてほしいために通っていただいています。
中には1年以上、長い人で3年以上リハビリに通院している方もいらっしゃいます。
つまり痛みが1年以上続いているということです。
めちゃくちゃ辛いですよね。しかしなぜ『痛みが取れない』のでしょうか。
今日はそのことについて考えていきましょう。
疼痛(痛み)とは
まず痛みとはなんでしょうか。皆さんも一度は経験したことがあると思います。
通常は組織損傷に対する反応として生じ、末梢の痛覚受容器とそれに対応するAδおよびC線維で構成される感覚神経線維(侵害受容器)が活性化することによって発生する。とされています。
簡単に説明すると、怪我したときや身体に異常をきたしたときに身体からの警告信号の反応として起こっているのが『痛み』です。痛みは身体を守るために必ず重要です。
スネをぶつけたり画鋲を踏んだりして怪我をした時に感じる疼痛(痛み)は、画鋲が直接痛みを起こしているわけではないのです。
痛みの原因は、画鋲などにより皮膚などの組織を傷つけると痛みを起こす物質が産生され受容体と結合することで、痛みを起こしたり感じやすくさせたりします。
また、大きく分けて『急性疼痛』と『慢性疼痛』に分類され、その中で、侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛・心因性疼痛に分けられます。
この説明をする前に、まず痛みの閾値というものを説明します。
閾値
人は痛みを身体で感じる際、『閾値』というものが存在します。
閾値とは、このラインまでの刺激は痛みと感じないが、ある一定のラインを超えると痛いと感じるというものです。
通常
通常はこのように、ある一定のラインが存在し、それを越えると痛みを感じます。
閾値が高い
次に痛み閾値が高い場合です。
痛み閾値が高い場合は、『痛みを感じにくく』なります。そのため、痛みに強く、少々の刺激を受けても痛いと感じません。
閾値が低い
こちらは痛み閾値が低い場合であり、治療を行う上では”非常に厄介”です。
普段痛みと感じない刺激でも、『痛みを感じやすく、痛い』と思ってしまいます。そのため小さい刺激にも敏感であり、痛みをなかなか改善できない例が多いです。
治療を行う上で必要なのは、『痛み閾値を上げる』ことも重要です。
痛み閾値に影響する因子としてこれらが挙げられます。
参考:
やはり、心理面での影響が強いと閾値が下がりやすいです。
そのため、リラックスしたり、十分な睡眠や休憩を取ることで閾値を上げ、痛みに強くなっていきます。
中には、鎮痛薬や抗不安薬・抗うつ薬などを用いて痛み閾値の向上を図ります。
急性疼痛
通常は組織損傷に対する反応として生じ,末梢の痛覚受容器とそれに対応するAδおよびC線維で構成される感覚神経線維(侵害受容器)が活性化することによって発生します。怪我をしたときに起こる身体からの危険信号です。
今回は、詳しい説明は省略します。
慢性疼痛
慢性疼痛には、危険信号の役割はありません。ただ苦痛なだけです。
慢性疼痛の原因ははっきりいって、既に治っているか、治っていないとしても治すのが困難なものばかりです。そのため難渋します。
慢性疼痛の基準として、『3ヵ月以上継続するもの』とされています。
そのため、痛みは3か月以内に取り除かないと厄介になってくるのです。
慢性疼痛のメカニズム
慢性疼痛には、『疼痛の負のサイクル』が存在します。
『痛みが痛みを呼ぶ状態』です。
例えば、運動や同じ姿勢をしていて筋肉にストレスがかかり、筋疲労が起こるとします。筋疲労が起こると、身体が反応し、痛みにより交感神経優位になったり、記憶の強化が起こります。交感神経優位になると、身体は興奮状態になり下記の表の状態が起きます。
疼痛への対応のため興奮状態となった身体は、さらに身体に力が入り、体幹の筋肉を中心に活動が活発(亢進)になります。
身体に力が入った状態が続くと、筋肉の硬結(いわゆるこわった状態)になり、筋肉の酸欠状態が続き、動きに制限がかかります。柔軟性が低下した身体に対応するため、姿勢の変化が起きます。
姿勢の変化により他部位にストレスがかかり、筋疲労が起き・・・
と永遠に負のサイクルから抜け出せなくなるのです。
よく、『痛いところをかばうから他の場所が痛くなった』といいますよね。
負のサイクルがあるために『痛みが痛みを呼ぶ』という状態に陥るのです。
抑うつが原因?
慢性疼痛者には抑うつ状態の人が多いと言われています。
3か月以上痛みが続く患者の80%が抑うつと言われており、治療に難渋する例が多いです。
痛みの種類で心因性疼痛に軽く触れましたが、『心の病気』により、実際は痛くない所が痛く感じたり、痛みがあると思い込んだりして『脳がエラー』を起こしています。
さらに、中枢性感作とも言われるものがあり、「同じ場所に一定の刺激を与えると、普段は痛くないと感じる刺激でも痛みを感じる」というような状態に陥ります。
当院リハビリに来院される患者で、慢性疼痛がある方の既往歴を見てみると、たいていの方に『何らかの精神疾患を合併している』確率が高いです。
リハビリを行っていると分かるのですが、
『この人は痛みに弱いな。心が弱いな』と身体を触っただけで分かります。これはセラピストならではの感覚ではないでしょうか。
そういった方には接し方やアプローチを変えています。
慢性疼痛の治療
ここでは、慢性「腰痛」を例に挙げます。
こちらはの表をご覧ください。
引用:米国腰痛診療ガイドライン
次に、薬物療法について説明します。
参考:腰痛診療ガイドライン2012 慢性腰痛に対する各薬剤の推奨度
とされており、慢性疼痛に対して、精神薬を投与する例がみられます。
このように、身体面だけでなく、認知面へのアプローチも行っていく必要があるのです。
しかし、今の時代、自分が何の薬をもらったかを調べるのが当たり前の世の中です。そのため、患者さんに精神薬を投与する際の説明がとても重要になってくるのが課題です。自分は身体が悪いのではなく、心が悪いのだと認めてもらう必要があるからです。
まずは規則正しい生活・食生活を送り、身体の健康に心がけましょう。しっかりリラックスすることや睡眠も大事になってきます。